AIの話題は、画像診断や問診、電話の自動応答など、患者さんと接する場面が中心になりがちです。けれども、在宅医療クリニックでいちばん効果が出やすいのは、事務の仕事です。在宅療養支援診療所の事務長として、実際に事務の工程をAIで自動化してきた経験から、任せられること・任せないこと・始め方を整理します。
在宅医療でAIが効きやすい理由
在宅医療の事務には、外来にはない仕事が多くあります。訪問看護指示書、ケアマネジャーへの情報提供、施設とのやりとり、訪問スケジュールの調整、在宅特有の算定要件の確認——。決まった形の書類と、データの突き合わせが多いことが特徴で、これはAIが得意とする仕事です。
しかも在宅医療クリニックは、事務のスタッフが少人数のことが多く、一人が抜けると仕事が回らなくなります。AIで下書きや点検を任せられれば、その分を院長の補佐や地域との連携に回せます。
AIに任せられる事務
| 仕事 | AIが担うこと | 人が担うこと |
|---|---|---|
| 書類の作成 | 訪問看護指示書や報告書、案内文の下書き | 内容の確認・修正、医師の署名 |
| レセプトの点検 | 算定漏れや要件の確認が必要な箇所の洗い出し | 算定するかどうかの判断 |
| 経営の数字 | 患者数・単価・加算の算定状況の集計とレポート化 | 数字をもとにした経営判断 |
| 会議の記録 | 録音からの議事録の下書き、宿題の整理 | 決定事項の確認 |
| 制度の確認 | 改定資料・疑義解釈の要点の整理 | 原文での最終確認 |
どの仕事も、AIは下書きと洗い出しまで、確認と判断は人という分担が基本です。この線を最初に決めておくと、スタッフも安心して使えます。
AIに任せないこと
- 診療の判断:AIを診断や治療の支援に使う場合でも、最終的な判断と責任は医師にあります。厚生労働省は、AIを用いた診断・治療支援プログラムを使う場合も、判断の主体は医師であるとの考え方を示しています(平成30年12月19日 医政医発1219第1号)。
- 患者さん・ご家族との合意:療養の方針や看取りの話し合いは、人が向き合う仕事です。
- 院内の合意づくり:部署をまたいで仕事を変えるときの調整は、AIでは代われません。
- 行政との折衝:届出や指導への対応は、資料の準備をAIで速くしても、説明と判断は人が担います。
患者さんの情報をどう守るか
医療機関がAIを使うときに、いちばん気をつけたいのが患者さんの情報です。個人情報保護法に加えて、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を踏まえ、次の点を事前に決めておきましょう。
- 入力したデータが、AIの学習に使われない設定・契約になっているか
- データをどこに置き、誰がアクセスできるか
- 氏名などを伏せて扱える工程はどれか
- 出力を誰が確認し、どこに記録を残すか
AI活用の始め方:4つのステップ
- 業務を書き出す:事務の仕事を一覧にし、時間がかかるもの・ミスが起きやすいものに印をつけます。
- 1つの工程から始める:効果が大きく、人の確認で安全を保てる工程(書類の下書きなど)を1つ選びます。
- 確認の手順とセットで動かす:AIの出力を誰がどう確認するかを決めてから、実際のデータで試します。
- 手順書にして広げる:スタッフが自分で回せるよう手順をまとめ、次の工程へ広げます。
一度に全部を変えようとせず、1つの工程で成果を確かめてから広げるのが、現場に定着させるいちばんの近道です。
MI-ZAの場合
MI-ZAの取締役 石塚秀俊は、在宅療養支援診療所の現役の事務長として、AIによる書類作成をはじめ24の工程をすでに自動化しています。AIの仕組みは、まず自分たちの現場で使い、成果を確かめてからご提供しています。AIの活用は、経営・運営支援の手段のひとつとして、業務の流れや体制とあわせてご提案します。
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この記事の発信元
在宅医療の現場で事務長を務めてきた経験をもとに、医療機関とヘルスケア企業を支援するMI-ZA。本記事の知見は、データを活かした経営・業務改善に活かしています。
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